中庸への回帰

ベンチャーキャピタリスト/山家 創(やんべ そう)のブログです。

「研究開発型ベンチャーにおいて、知財戦略は重要である」の真意を理解するための二冊

「研究開発型ベンチャーにおいて、知財戦略は重要である」

誰も否定することのない、もはや使い古された言葉と言っても過言ではないくらい、至るところでこの標語を耳にする。下町ロケットのモデルとして有名になった弁護士の鮫島先生ほか、多くの諸先輩方・先生方の努力ゆえに、知財戦略の重要性が日の目を見たことに他ならないが、一方で、研究開発型ベンチャーや僕たちVCの人間が、本質的にその重要性を理解しているか?というと、僕自身はかなり怪しかった。

そこで、今回ご紹介する二冊のほか、知的財産やベンチャー法務という観点でいくつか本を読んで、理解したこと。
それは、「特許を取ること自体に、あまり価値はない」ということだ。すごく当たり前のことだけど、すごく重要だから整理したいと思う。

レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?:特許・知財の最新常識

レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?:特許・知財の最新常識

何のために特許を取るのか?

この質問に的確な返答が出来る人は、研究開発型ベンチャー関係者にも多くないんじゃないかと思う。ちなみに、これまでの僕の認識は、こうだ。

  • 特許は「技術力の証明書」みたいなもの
  • 特許を取れば「技術を守る」ことが出来る
  • 特許は資金調達のための「(投資家に向けた)箔」みたいなもの

間違ってはいないし、一理あるとも言えるだろうが、いまのぼくの解釈は、こうだ。

  • 特許は「模倣のリスクを負って、模倣を防ぐ」ものだ。
  • 特許は「訴訟する覚悟」とセットで取るものだ。
  • 特許を取らないという「戦略上の価値」があり得る。

私なりの言い方をすると、特許というものは「知財ににせた透明な防護服」です。放射線から作業者を守る放射線防護服や火災から消防士を守る消防服のイメージです。
防護服を着ていれば、外敵からは守られるかもしれませんが、中身は丸見えになってしまっている。これが、特許なのです。
(レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?:特許・知財の最新常識)

言い得て妙だと思う。つまり、特許というのは自社の知財を「守る」ことが目的である一方で、特許という名の「公開情報」として世界の目にさらされるのだ。自社の特許(公開情報)をヒントとして、全く新しいアイディアを競合他社が生み出した場合、それは「模倣」とは呼べないリスクが常に存在するというわけだ。

そして、特許というのは、模倣された場合に「差止請求や損害賠償請求を発動する」ためのトリガーでしかない。競合他社が模倣した自社製品を購入する顧客企業に対して、「それは当社の模倣品ですので購入を取りやめて下さい」と話したところで、何の価値もない。法的措置の行使とセットになって初めて価値を持つものが、特許なのだ。

特許権を権利行使すること自体はビジネス上のゴールではないのだから、特許権を権利行使してビジネス上で何を得ようとしているのかを決める必要がある。このビジネスゴールは、(ア)特許侵害によって奪われたマーケットシェアの回復(差止請求)、(イ)特許侵害によって侵害者に奪われた利益の回復(損害賠償請求)の二つに収斂する。
知財戦略のススメ コモディティ化する時代に競争優位を築く)

研究開発型ベンチャーは、基本的に技術の特許化を重要視しているし、VC・投資家サイドも、取得する特許を投資検討の材料にしがちだ。しかし、特許の価値が模倣に対する法的措置の行使にあるならば、訴訟コストを負担できるとは考えにくい研究開発型ベンチャーが「特許を取らない」という戦略上の価値もあると思う。

ポイント1 その特許が現在または将来の自分のビジネスに役立つかどうか
ポイント2 自分のアイデアをもとに作られた製品を見ただけで、他者がそのアイデアを真似できるかどうか
ポイント3 自分のアイデアをパクった者が現れたとき、裁判で戦う覚悟と勇気と費用があるかどうか
(レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?:特許・知財の最新常識)

何かの製造レシピやノウハウなどは、特許化されないことが多い。そして、そのような特許化されない部分にこそ、そのベンチャー企業のコア技術が存在している割合も多いように思う。

僕が特許に対して以前に感じていた「(投資家に向けた)箔」とは、VCの立場になってみると間違ってはいないと思うが、ある種これは、VCがベンチャーに騙されていることに近い。ベンチャーにしてみれば、してやったりだろう。

つまり大事なことは、「特許を持っているか」ではなく、「なぜその特許を持っているのか」という問いだと思う。

  • ベンチャーであれば「なぜその特許を取ろうとしているのか」を改めて考えてみる
  • VCであれば「その特許を保有する理由」を戦略的に語れるかどうかを評価してみる


「研究開発型ベンチャーにおいて、知財戦略は重要である」の真意は、そこにあるのではないだろうか。

東北にベンチャーをつくることの意味

ある日のつぶやき

先日、「東北にベンチャーをつくる」ことについて、一連のツイートをした。割と自分の本音を表現できた気がするので、全て紹介したい。


実はまだ「東北にベンチャーをつくること」の意味を分かっていない。

偉そうにツラツラとツイートしているが、実はまだ「東北にベンチャーをつくること」の意味をよく分かっていない。意味があるのかどうかすらも分からない。なぜやるのか?と問われれば、「僕のエゴだ」としか答えられない。

そこで、もう少し自分なりに「東北にベンチャーをつくること」の意味を考えてみたい。「東北にベンチャーをつくる」と何が起きるのか。

東北地方に上場企業は何社あるのか?

新たに会社を興すという意味では、現在の上場企業も昔は皆ベンチャー企業だった。そして、そのベンチャー企業の成功は、すなわちEXITである(もちろん、成功でないEXITもある。また「成功」の定義は会社によって異なるので、あくまで一般論である)。ベンチャーキャピタル、投資家にとってもEXITが成功であり、ベンチャーのEXITはIPOM&Aだ。

そこでまずは、東北に上場企業(かつてのベンチャー企業)は何社いるのかを調べたい。ここでは「本店所在地が東北にある」企業を対象とした。

xn--vckya7nx51ik9ay55a3l3a.com


このサイトのデータを少し加工させていただいてリスト化したものは、スプレッドシートで閲覧のみ共有しておこう。

docs.google.com

結論を言えば、東北地方の上場企業は55社ある。
※リスト中の日本化成(株)は今年三菱化学の完全子会社になっている。

全国の上場企業は約3600社だから、東北地方の上場企業はそのうち2%に満たないということになる。
全国100社の上場企業をあたって、ようやく1,2社東北地方の企業が見つかるというレベルだ。

なお、東証一部上場企業に限れば、東北地方には28社存在する。東証一部上場企業は2000社を超えており、これは全体の1.5%に満たない。しかも、この東証一部上場企業のうち約半数の12社は地銀(金融機関)である。

ここで少し補足すると、大前提として、上場企業=価値のある会社ではない。「価値」の定義はさておき、非上場の会社にだって「価値」は存在するし、上場企業だから「価値」があるとも限らない。とはいえ、上場企業というのは株式市場というオープンマーケットで株主の厳しい目にさらされている。つまり、売上や利益を上げなければマーケットから退場せざるを得ないし、コンプラもしっかりしないといけないため、一定の「価値」はあると考えるのが妥当だ。

東北地方にイノベーションは起きているか?

イノベーションを「新たな企業が生まれ、上場すること」と仮に定義して、設立年や上場年の分布を見てみたい。

まず、東北地方の上場企業55社のほとんど(48社)が30年以上前に設立された企業だ。僕の年齢がいま30歳であるから、僕より若い企業はほとんどないと言える。
また、設立10年以内の上場企業が3社あるが、全て30年以上前に設立された会社同士の経営統合から生まれた持株会社である。
じもとホールディングスフィデアホールディングス、ダイユー・リックホールディングス)
つまり、先の定義に従えば、実質この10年間に東北地方でイノベーションは起こっていないと言える。

上場ケースを見てみると、ここ5年以内に上場した企業は6社いる。


持株会社の2社を除く4社の内、UMNファーマ(2004年設立)、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(2003年設立)は比較的若い企業としてイノベーションと言えるかもしれないが、逆に言えば、ここ十数年でのイノベーションは、たったの2社だ。

東北地方の上場企業の時価総額は?

株式市場という観点で会社の価値を測る指標の一つに時価総額がある。株価はある種人気投票で決まるため、時価総額がその会社の本質的な価値(利益を上げること)と直接的につながるわけではないものの、投資家が期待するくらい価値のある(ありそうな)企業とも言える。

東北地方の上場企業の時価総額は、合計で約2.3兆円。ちなみに、国内株式市場の時価総額合計は約582兆円だ。
株価および時価総額が人気投票だとすれば、日本の上場企業において東北地方の人気(期待)は1%にも満たない100人の投資家に「東北の上場企業に期待しているか?」と質問して、「はい」と答える投資家はおそらく一人もいない。たしかに、東北出身者以外に東北の上場企業を聞いたところで、おそらく名前に上がるのは東北電力くらいであろう。そのくらい、東北地方の上場企業に寄せられる期待は薄い

次に時価総額の分布を見てみよう。
まず、東北地方に時価総額1兆円を超える企業は1社もいない(17年2月15日時点)。東北電力の7150億円が最大だ。
ちなみに時価総額1兆円と言えば、国内の時価総額ランキングでトップ130位あたりに位置する。17年2月15日時点では、セイコーエプソン野村総研三菱自動車ヤマトホールディングスなどだ。普通の人なら、まぁ聞いたことのある企業だ。それが東北にはいない。

ベンチャーやVC界隈では、未上場企業ながら企業価値(≒時価総額)が1000億円を超える企業を「ユニコーン」、100億円以上を「ケンタウロス」などと呼ぶ。時価総額が1000億円と言えば、国内の時価総額ランキング770位あたりで、ユーグレナ王将フードサービスRIZAPグループなど私たちがよく耳にする企業もいる。ユーグレナは東大発ベンチャーとして初めて東証一部に上場したベンチャーの成功例の一つでもある。
一方、時価総額100億円となるとランキングはほぼ圏外で、一般の人が見聞きする企業は殆どない。上場はしているものの、成功予備軍企業というところか。

さて、東北地方のユニコーンは4社、ケンタウロスは34社ある。これだけ見ると悪くないように思えるが、もう少し内情を見てみよう。

残念ながら、ユニコーン4社のうち3社は、地銀・インフラ企業だ。金融機関やインフラは国策の影響を受けるため「かつてのベンチャー企業」とは呼びづらい。「かつてのベンチャー企業」としてユニコーンと言えば、日東紡の1社だけだ。

まとめ

ここまでの話をまとめてみよう。

東北地方には、

  • 上場企業は55社。全国における比重は2%に満たない。
  • 東証一部上場企業も全国の2%に満たない。しかも約半数は地銀(金融機関)。
  • 30歳(僕)より若い上場企業がほとんどない。
  • ここ10年くらいイノベーションが起きていない(10数年内に設立された企業の新規上場は実質2社)。
  • 上場企業への期待(人気)はほとんどない。
  • 時価総額1兆円以上の上場企業がない。
  • かつてのベンチャー企業としてユニコーンは1社だけ。
  • 誰もが知っている企業はほとんどない。

これが現実だ。北海道はどうか、九州地方はどうか、という点は調べてみる必要はあるが、いわゆる地方企業の現実は似たようなものではないだろうか。

「東北にベンチャーをつくる」と何が起きるのか

このブログを書きながら、僕には一つ目標が出来た。
それは、東北地方でこれから10年以内に時価総額1000億円を超えるベンチャー企業IPOを生み出すということだ。

これから10年以内に時価総額1000億円を超えるベンチャー企業(とそのIPO)をつくると、東北地方に何が起きるか。

  • 僕より若い上場企業が生まれ、若い世代が東北に集まるかもしれない
  • 一般の人でも見聞きするような上場企業が生まれ、働く人・家族に誇りが生まれるかもしれない

そして、その会社がもし時価総額1兆円を超える企業に成長したなら?

誰もが知る東北地方の象徴的な企業になるだろう。

時価総額から見れば、時価総額1兆円の企業を1つ作ったところで、日本全国から見た東北企業への期待度は殆ど変わらないかもしれない。

だがもしかしたら、その後続がどんどん育つかもしれない
そのとき日本社会は、東北は、大きく変わるのではなかろうか。


「東北にベンチャーをつくること」自体に意味はないが、「東北のベンチャー企業が成功すること」には間違いなく意味はある。

キャピタリストは可能性を“探る”のではなく“感じる”のだと思う。

最近、ベンチャー・キャピタリストである自分の課題として強く意識することがある。

それは、投資判断・投資意思決定の遅さだ。

以前にブログで書いた「ベンチャーキャピタリストに求められる意思決定とは?」では、投資しないという意思決定の重要性を述べたが、今回はその意思決定のための「判断基準」という話に近い。

どういうことかと言えば、キャピタリストはベンチャーの可能性を“探る”のではなく“感じる”ものではないかということだ。

例えば、いまの僕には以下のようなことが起きる。

  • どのベンチャーの技術も有望そうに見える
  • どのベンチャーにも投資したいと考えてしまう
  • どのベンチャー起業家も尊敬するし、助けたい
  • 直感的に投資は難しいと思ったとしても、投資する理由を考えてしまう

これは自分自身の勉強不足、経験不足が原因にあることは深く反省した上で、キャピタリストはベンチャーの可能性を“探る”のではないと思う。この“探る”という定義が難しいが、“本来ないものをあると思って探す”ことに近い。

例えば、誰も見向きもしないベンチャー企業に唯一投資したキャピタリストがいたとする。そのベンチャー企業が大成功をおさめたとき、果たして彼(キャピタリスト)はベンチャーの可能性を探して投資したのだろうか?

僕の感覚としては、NOだと思う。

彼は“探った”のではなく“感じた”から投資したのではなかろうか。

つまりは、初見で話を聞いただけで可能性を感じるくらいのベンチャーでないと、そもそも成功可能性は限りなく小さいのだと思う。そして、そのベンチャー企業の可能性をずるずると探ることは、決してベンチャーにとっても望ましいことではない。日本のVCでよく起こりがちな「別途検討します」というスパイラルにハマり、ベンチャーの時間を奪う。

ベンチャーキャピタリストは、可能性を感じなければ即断で断わる(逆もしかり)。

今年は、特にこれを意識したいと思う。

 

 

 

まずは、5年後に生き残る大学発ベンチャーを目指して

先日、文科省主催の『大学発ベンチャー創出シンポジウム』に参加してきた。
産業革新機構の志賀CEOをはじめ、大学発ベンチャー界隈では名だたる方々が登壇する、なかなか勉強になるシンポジウムであった。

シンポジウムの感想を含めて、簡単に「大学発ベンチャー」について少し調べたものをまとめたい。

大学発ベンチャーの事業環境

平成27年の経産省調査によれば、大学発ベンチャーは1,773社存在する。また、この内、黒字化しているベンチャーは55.6%に上る。
大学発ベンチャーの数、黒字化の比率いずれも前年を上回っている。ちなみに大学発ベンチャー数のピークは平成20年で1,807社だ。

現在はほぼピーク時の水準に達しており、既に900~1000社が黒字化していると言えよう。
47都道府県の各地に大学発ベンチャーが存在していると仮定(※)すれば、1都道府県あたり20社程度が既に黒字化しているということだ。
これは感覚的にかなり多いと思う。

※実際には東大発のベンチャーが圧倒的に多いので、あくまでも仮定の話だ

もう少し過去に遡れば、平成16年において黒字化した大学発ベンチャーの比率は26.6%であった。
およそ10年を掛けて研究開発、事業を行ってきた大学発ベンチャーが徐々に実を結んできたということであろう。

但し、本調査における「大学発ベンチャー」とは、

1. 研究成果ベンチャー:大学で達成された研究成果に基づく特許や新たな技術・ビジネス手法を事業化する目的で
新規に設立されたベンチャー

2. 協同研究ベンチャー:創業者の持つ技術やノウハウを事業化するために、設立5年以内に大学と協同研究等を
行ったベンチャー

3. 技術移転ベンチャー:既存事業を維持・発展させるため、設立5年以内に大学から技術移転等を受けたベンチャー

4. 学生ベンチャー:大学と深い関連のある学生ベンチャー

5. 関連ベンチャー:大学からの出資がある等その他、大学と深い関連のあるベンチャー

とあるから、全ての大学発ベンチャー = 研究開発型ベンチャーとは呼べないことに注意は必要だ。
例えば、東大の学生たちが起業したアプリ開発ベンチャー大学発ベンチャーと呼ばれ得る。
一般的な大学発ベンチャーの定義は、1. 研究成果ベンチャーだと思われるが、これがどの程度存在するのか気になるところだ。

大学発ベンチャーを支援する政策

大学発ベンチャーを支援する政策も充実してきた。
主立ったものをいくつか紹介する。

科学技術振興機構JST

大学発新事業創出プログラム(START)
  • プロジェクト支援型

1プロジェクトあたり基本額年間3千万円 x 3年以下

  • 事業プロモーター支援型

1事業プロモーターあたり原則上限年間2,500万円程度 x 5年度
※1事業プロモーターあたり4~5件程度

研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)

必ずしも大学発ベンチャーというものに限らないが、大学の研究成果を実用化するための技術移転支援制度だ。対象によっては最大で15億円をJSTが支援する。

新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO

こちらも大学発ベンチャーには限らないものの、研究開発型ベンチャーという広いくくりで支援する制度だ。

中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業

中小企業という枠組みでも大学等との共同開発が支援されている。

1億円以内(下限は1,500万円) ※事業期間中の総計

  • 実施項目2 追加実証・用途開拓研究支援事業-サンプルづくり支援事業-

1,000万円以内(下限は300万円)


これらに限らず、各地方自治体等でもベンチャーへの助成事業は活発化している。

大学発ベンチャーを支援するVC

上述したNEDOの「シード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援」で定められる認定VCとして、現在のところ18社のVCが認定されている。
加えて、昨今では東大を始めとする「大学発VC」が生まれており、大阪大、京大、東北大を含む計4大学に計1,000億円という膨大な資金が流れている。

business.nikkeibp.co.jp

事業会社によるファンド(CVC:コーポレートベンチャ–キャピタル)のニュースもよく目にするが、これも自社の新規事業の種として、研究開発型ベンチャーに注目が集まっている一因であろう。

大学発ベンチャーは、いまバブルである

シンポジウムの感想について誤解を恐れずに言えば、

大学発ベンチャーは、いまバブルである

ということに尽きる。シンポジウムに参加したいくつかのVCの中には、従来は大学発ベンチャーとは遠いところに位置していたVCも含まれている。
彼らは、いまどこに資金が流れているかを肌感覚として持ち合わせているのだ。

ただし、冒頭の経産省調査で忘れてならないのは、平成26年から27年にかけて24社増えた大学発ベンチャーの内訳とは、平成27年以前に設立されたベンチャーで新たに認識された144社に平成27年新規設立の52社を足して、調査時に閉鎖が確認された172社を除いているということだ。
つまり、新たに生まれる以上の大学発ベンチャーが死んでいるのだ。

たしかに大学発ベンチャーはバブルであり、今後数年で見れば大学発ベンチャーは一時的に増えるかもしれないが、長期的には淘汰が進んでいくと見る方が自然だと思う。

そして、5年後に本物だけが生き残る。

これは大学発ベンチャーだけでなく、大学発ベンチャーに投資する私たちVCも、そうだ。
時代に流されすぎず、確かな眼と支援で、まずは5年後に生き残る大学発ベンチャー創出を目指したい。

ざっと「STEM」を知るなら『AI時代の人生戦略』と『日経テクノロジー展望2017 世界を変える100の技術』

ベンチャーキャピタリストという仕事柄「STEM」は必須である。
今年の目標の一つも、この「STEM」の知見を増やすことだ。
そんな「STEM」をざっと知りたいときにオススメの二冊を紹介する。

STEMとは?

STEMとは、

  • サイエンス(科学)の「S」
  • テクノロジー(技術)の「T」
  • エンジニアリング(工学)の「E」
  • マセマティックス(数学)の「M」

を並べた造語である。
「技術」と「工学」の区別について、『AI時代の人生戦略』著者:成毛氏は"技術はツールをつくること、工学はそのツールを活かす方法"だと述べている。

日本に根付く「文系」と「理系」

私自身はSTEMという言葉を知っていたし、仕事柄「STEMは超大事」という実感をこれまでも持ってきた。裏を返せば、いわゆる「理系」への羨望があった。「文系」である自分へのコンプレックスというべきか。

日本には、この「文系」と「理系」という区別が根強い。これは日本の教育において、大きなマイナスであると思う。

例えば、大学を卒業して、社会に出て、営業という仕事に就くとする。
日本ではなぜかこの営業という仕事は、「文系の方が得意だ」という謎のレッテルが存在する。
文系でも営業が苦手な人はたくさんいるし、逆も然りだ。だけども「文系」と「理系」というカテゴリーに学生時代どっぷりと浸かることで、本来自分が好きなこと、得意なことを見失ってしまうのではないか。

そもそも、「文系」である経済学や経営学部は、「社会科学」という名の「サイエンス」なのだ。

とは言え、STEMをどう学ぶのか

「STEMは超大事」とは言え、30歳を過ぎて大学院で研究をするわけにもいかない。そこで大事なのは。成毛氏のいう「実感してから理解する」だと思う。

そもそも英語のスタディ(study)は、ラテン語のストゥディウム(studium)に由来している。その意味は「好奇心をもって没頭する」ということ。

実感すること、理解することには、楽しさが存在する。楽しく学ぶことが重要なのだ。

そこで浅く広く、今の世の中のトレンドとして技術を俯瞰するのに『日経テクノロジー展望2017 世界を変える100の技術』は適している。内容が薄すぎると思う箇所も多々あるが、まずは100の技術を知るというスタンスだといい。

例えば、僕であれば、以下のような技術に興味をもった。

興味を持った技術について、より深堀する読書をすれば、それだけでも成長感があると思う。

有り難いことに、僕は仕事柄おおくの技術に触れる。それ故に、技術が社会にどう実装されるのか、実感を持ちやすい。
だけれども、その先に求められるのはSTEMを組み合わせて活用する手腕であり、思考回路だ。それはまた別の手段で身に付けねばならないだろう。

明日から憂鬱な飲み会がなくなるかもしれない『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』

「昔の友だちとなら本当の自分を出せるけど、会社は別だから」
「本当の自分を分かってくれるのは、家族だけ」
「別に新しい人と付き合わなくてもいいし」

人間関係で悩む人は多い。
なぜ、人間関係がうまくいかないのか?

「結局、あなたの心が冷めているからだ」

特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ (新潮文庫)

特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ (新潮文庫)

目次

本書は47のエピソードをもって、「あなたの心が冷めている」と指摘し、「誰でも必ずできる、しかし誰もができていないこと」を指南する。
妙に長いタイトルに対して、内容は非常にコンパクト。
目次を見るだけで、立ち読みしたい!と思ってしまうのではなかろうか。

第1章 冷めた心に火を灯せ

01なぜ、僕たちの心は冷めてしまうのか?
02 サンデル教授と松岡修造ではどちらが白熱しているか
03 性格は変えられないが、行動は変えられる
04 『クレヨンしんちゃん』と『ドラえもん』の劇場版に 涙するわけ
05 感情はコントロールできないが、 言葉はコントロールできる
06 僕たちが『ガンダム』『北斗の拳』『ワンピース』に 熱狂したわけ
07 阿吽の国、ニッポンでの生き方

第2章 ゼロから信頼を築く

08 人間を4種類に分けてみる
09 天才・凡人・中二病
10 人が人を認める瞬間
11距離を測る、距離を縮める
12 ガッカリの原因と処方箋
13 恋愛が長続きしないわけ
14 我が国におけるお酌文化
15 嫌いなアイツと仲良くできるのか?
16 他人を認めるというスキル
17最初のキッスと最後のキッス

第3章 人間関係で悩まない

18 役割が性格をつくる
19 「私は博士じゃ」と本物の博士は言わない
20 フグ田マスオ、そしてサザエさん症候群
21 チームプレイは合コンの中で覚えればいい
22 お見合い結婚の離婚率が低いわけ
23 お見合いおばちゃんの誘導尋問
24 「人見知り」「空気が読めない」の治し方
25「何でわかってくれないの?」を克服する
26 ツンデレとマインドコントロール
27 人の心は透視できるのか?

第4章 人を本気にさせてみろ

28 人が本気になる条件
29 お金で買える心、買えない心
30 アメアメアメアメムチアメ
31 仏様にあって、ナチスドイツになかったもの
32 自信のないあの子をやる気にさせる方法
33 家族みんなでモンスターハンター
34 ダチョウ倶楽部化する世界の中で僕たちができること
35 結局、企業で最後に生き残る人たち
36 いい子を育てようとするとひねくれる
37 安西先生という生き方

第5章 打たれ強くなれ

38 人の心を支えるもの
39 たたかう、まほう、まもる、アイテム、にげる
40欲求不満とネット炎上
41 記憶と宗教とディズニーとスタバ
42プーさんとブータン
43 カツラや整形が気になって仕方ないわけ
44 嫌悪感の正体
45行きたくない飲み会や立食会に 元気よく出かける方法
46 「感動」と「カンドー」論争
47「自分」という怪物の飼い慣らし方

結局、個性とかアイデンティティとかプライドっていらない

映画『es』のモデルとなった「スタンフォード監獄実験」では、看守役が暴力的、支配的となり、囚人役が暴動を起こし、結果的に実験からわずか1週間で中止になったと言われる。
エピソード18にもあるように、「人は役割を与えられるとその役割に応じた自分を演じようとする」のだ。

属する環境によって、人の役割は異なる。

結婚をすれば「夫」、子どもを授かれば「親」としての役割が与えられる。
社会に出て仕事を始めれば「ビジネスマン(サラリーマン)」、「部下(上司)」、「営業」などという役割。
昔ながらの「友人」としての役割、飲み会での「盛り上げ役」とか「まとめ役」。

誰もが何となく納得することだろうが、それぞれの役割によって「自分」は異なる。
これは別に良いとか悪いということではなくて、「そういうもん」なのだ。

だから、個性とかアイデンティティとかプライドにこだわり過ぎるよりも、多くの「自分」を楽しんでみればいいのだ。
というか、個性とかアイデンティティとかプライドなんてものは、実は自分が勝手に描いた「幻想」かもしれない。

本書を読めば、何となく肩の荷が下りて、「明日の飲み会やっぱり行こうかな」なんて思えるはずだ。

2017年の抱負と目標

謹賀新年

あけましておめでとうございます。
今年最初のブログ更新は、2017年の抱負と目標についてです。

2017年の抱負

2017年は、より強く、大きくなるをテーマに、仕事にプライベートに邁進していきたいと思います。
武道の世界なんかでは「心・技・体」と言われますが、なかでも特に今年は「」と「」をもっと強く、大きくしていこうと。

2016年は、VCの仕事を始めて人と会う(ことに伴う出張の)回数が増えましたし、メンタルへのプレッシャーが増しています。
いつ潰れるか分からないようなベンチャー企業を見定めて投資をし、長い時間を掛けて成功に導いていくというのは、頭では分かっていながら、やはり相当なハードルの仕事です。

一方で最近思うのは、ベンチャー企業の経営者は、僕以上に命を懸けて仕事をしているということ。
やっぱり、経営者やベンチャー企業の役に立てるキャピタリストであるには、月並みな言い方をすれば、経営者にとって「頼もしい」とか「安心できる」キャピタリストであることが必要です。
これは「(何かに)詳しい」とか「いつも元気」とか、そういう小さいことの積み重ねでしか実現できない気がしていて、ならば今年は「より強く、大きくなろう」と考えたわけです。

2017年の目標

仕事

・シードに2件投資、昨年から注目している企業には絶対投資
・地方とのリレーションを強化(特に出身地の仙台、東北)
・投資先の取締役就任と黒字化
・投資先の大型資金調達
・ビビらず、遠慮せず、謙虚に
・たとえ苦手でも人に会う、話し掛ける

運動・健康

・筋トレを2日ずつ継続(インターバル1日)
フルマラソンでサブ4
トライアスロン準備
・飲み会はビール1杯、禁煙
・コーヒーは1日1杯

学習

・本は月5冊、年60冊が最低限
・毎日日記をつける
・週1回ブログ更新

家族

・妻の家事をサポート
・娘には世界で一番かわいいと伝え続ける

目標は言霊として

今日たまたま「言霊」という言葉を目にして、その大切さみたいなものを思い出したんです。

以前の僕も、VCの仕事がしたくて、とにかく色んな人に「VCをやりたい」「どうすればベンチャーキャピタリストになれるか」ということを言葉にして出してきました。それが言霊になった体験があります。

最近は少し忘れていました、言霊の力を。ちょっと大人しくなって、自分の中だけで消失していたかもしれません。

ベンチャーキャピタリストとして、父として、夫として、友として、男として、人として、

より強く、大きくなる