中庸への回帰

ベンチャーキャピタリスト/山家 創(やんべ そう)のブログです。

ベンチャーキャピタリストって、別に群れてるわけじゃないですよね?

ベンチャーキャピタリストに求められる要件(経験、スキルなど)があるとすれば、その一つに「人脈・ネットワーク」をあげる関係者は多いのではないでしょうか。投資先であるベンチャー企業のDDやベンチャー支援において、その業界や技術に専門性を有する人脈や、ベンチャー企業のチームに不足するメンバーを送り出せるネットワークが大事だというのは、日々の業務において痛感するところです。
それゆえに、ベンチャーキャピタリスト同士の横のつながりが大事だということも異論ありません。

ただ、一つ言わせてください。

キャピタリスト同士で群れ過ぎじゃないでしょうか?

私のような駆け出しぺーぺーのキャピタリストが何を生意気な、というお叱りは最もです。別に群れているわけではなく、純粋にキャピタリスト同士の交流の場があるのは大事なことです。

ただ、キャピタリストを集めた勉強会の場で、セミナー講師もいらっしゃる場で、ぺちゃくちゃと講義・講演中に雑談するのは、いかがなものでしょうか。
おそらく著名なキャピタリストであられたので、講義を受けるまでもない専門的な知識があって、退屈だったのかもしれません。
久しぶりにあったキャピタリスト同士に交流をされていたのかもしれません。

ただ、マナーが無さすぎではないでしょうか?

仮に僕がベンチャーキャピタリストを目指す学生としてあの場にいたならば、「ベンチャーキャピタリストってチャラチャラしてダサい」と思ったでしょう。一握りのマナー違反で、VC業界を盛り上げていこうという場に水を差すのはいかがなものでしょうか。

人脈と群れることは違うと思います。
ネットワーキングとマナー違反は別次元です。

自戒として。

ベンチャーキャピタリストに求められる意思決定とは?

先日、米ベンチャーのセラノスに関して、シリコンバレーの内情をよくご存知な渡辺千賀さんの記事を拝読しました。(お会いしたことはありませんが。。)

非常に参考になり、いろいろ考えることがあったのでまとめます。 

キャピタリストによるリファレンス

一般的なVCのディールフローとして、ソーシングからデューデリジェンスまでに、第三者(ベンチャーでもなくVCでもない)にリファレンスとしてインタビューを実施することが多いです。

例えば、その技術領域の専門家や顧客(候補)へのヒヤリングなどです。VCは横の繋がりが強いですから、他のキャピタリストへのリファレンスもあるかもしれません。

もちろん、リファレンスで全ての投資判断がなされるわけではありませんが、「良いリファレンス」を取れるかどうかは、キャピタリストの人脈形成含めて重要です。

但し、ここで注目すべきは、そのリファレンス自体を疑えるかどうかかなと。

つまり、今回のヘリオスで言われているのは、オラクルCEOのラリー・エリソンを始めとする著名人が同社に投資を実行したことによって、このリファレンス先が非常に充実していた(というか充実しているように見えた)ために、多くの投資家が実体のない技術に700億円もの金をつぎ込んでしまったわけです。ブランド名だけに価値を見出す買い物と似ているかもしれません。

最後の投資判断は主観

渡辺さんが指摘している重要なポイントは客観的な意見ではなく主観で投資すること」だと思います。リファレンス=客観的なデータ・意見が一般的なVCで重要視されると述べながら矛盾していますが、リファレンス先がすでにベンチャーに対して一定のバイアスが掛かっている(特に共同研究先などベンチャーWin-Winな関係の)場合には特に注意が必要ですし、どんなにリファレンスを取ったところで、最後の投資判断はキャピタリスト本人なわけです。

キャピタリスト本人のバイアス

これはキャピタリストとしての経験値によるのかもしれませんが、私のように経験の浅い人間はどうしても「投資機会を逃したくない」、すなわち「投資する」方にバイアスが掛かるのではないでしょうか。ベンチャーキャピタリストの仕事は投資して初めてスタートするわけで、そのスタート地点は沢山あった方がいいですよね。ファンドの情勢が悪くて案件が限られる場合も同じようなバイアスが掛かりそうです。

投資しないという意思決定

このバイアスを排除して、いかにフラットな意思決定が出来るか。これは突き詰めると「投資しない」という意思決定が出来るかどうか。今回のヘリオスを失敗とするならば、当社に手を出さなかったセコイヤやアンドリーセン・ホロウィッツなどの目利きは、その点においてやっぱり凄いわけです。「投資しない」という意思決定がある種当たったわけですから。

「投資しなかった時に後悔するかどうか」

目の前にいるベンチャー企業がこれから大きく羽ばたくとして、自分がそこに居合わせなかったことに後悔するかどうか。拙くシンプルですが、僕自身はこれを大事にしていこうと思います。

 

人間ドックを調べる

予防医療として人間ドックをもっと普及、進化させなければいけないなと個人的に関心を持ってるのですが、じゃあ人間ドックの現状ってどうなの?を調べてみました。

人間ドックの現況‐2015年‐

日本人間ドック学会が毎年発表している「人間ドックの現況」について最新データを確認してみます。トピックとしては以下かと。

  • 国内の人間ドック指定病院、協力施設、機能評価認定施設数は約720施設。前年と施設数はほぼ変わっていない。
  • 人間ドックの総受診者数は316万人。その内、60歳未満が75%。特に40~50代が63%。
  • 統計上1984年から始まった人間ドックだが、最近の受診者数はほぼ頭打ち。
  • 最新の人口統計によると30才以上が約9200万人なので、そもそも人間ドックの受診率って少ない(3~4%くらい)。
  • 人間ドックで発見した臓器別ガン症例数のトップは1位:胃(2,048例)、2位:大腸(1,493例)、3位:肺(646例)
  • 年齢別にみた胃がんおよび大腸がんの発見率は、全受診者数300万人に対して発見胃がん約2000(0.06%)、発見大腸がん約1500(0.05%)

気になるポイント

  • オプションで胃カメラや大腸カメラを受診している人がどれくらいの人数なのか
  • オプションで胃カメラや大腸カメラを受診した場合の胃がん、大腸がん発見率
  • あるいは上記はすでに統計に含まれているのか
  • 人間ドックに限らずがん検診などの統計はどうか

がん検診については、2016年4月から内視鏡検査(胃カメラ)が追加されるようです。バリウム検査が苦手な人に対して、内視鏡による受診率向上が期待されているようですが、「オエッ」とする感じはどちらも変わらなそうですね。。鼻から導入する径鼻内視鏡に期待というところでしょうか。

個人的には、人間ドックのオプションを安価に、より低侵襲なものを提供することでがん発見率の向上に寄与出来ないかと。
それによって人間ドック受診者数を増やして、健康社会を実現するみたいなストーリーを考え中です。

30歳を過ぎて自分の性格は変えられるのか?

皆さんも「自分の○○な性格を変えたい」と思ったことがあるのではないでしょうか。
例えば、僕ならばこういう性格を変えたい。

  • 議論や揉め事を避ける性格
  • 率直な物言いを避ける性格
  • 他人に遠慮がちな性格
  • 他人に嫌われることを避ける性格

などなど。

30歳を過ぎて、自分の性格は変えられるのでしょうか?

言うまでもなく、これは簡単ではないでしょう。「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもので、ましてや30年間も身を置いた環境下で育った(育てられた)人間の性格というのは、いつのタイミングからか「個性」と呼ばれ始めて、変える/変えないの領域からは切り離されていきます。

「変える」よりも「上手く付き合う」に近い

スポーツの世界にメンタルトレーナーがいるように、あるいはビジネスの世界でコーチングがあるように、性格は「変える」よりも「上手く付き合う」ことが大事ではないかと。
僕は性格診断のようなものが好きです。詳しくは別の機会に触れたいと思いますが、ストレングス・ファインダーやMBTI、VIA-ISなど過去の診断結果をストックして、定期的に見直したりしています。複数のツールでやってみると分かるのですが、自分の診断結果というのは、一定の共通項があります。
例えば、僕であれば以下のようなものです。

  • 規律よりも柔軟にいろいろやっていきたい
  • 論理よりも感情とか道義で動きがち
  • ルーティンとか超嫌い
  • 計画よりも行動
  • 調和とか共感を重んじる

で、こうした自分の性格は、仕事においては上手く付き合わなければいけないときがあるんですね。
例えば僕はベンチャーキャピタリストですから、

  • 社長が感情的で社員が付いてこなければ困る
  • ルーティンワークも大事
  • 事業計画も必要

というように、割と自分の性格とは真逆のことを実行する、もしくはベンチャー企業に実行するよう諭さなければならない立場のわけです。
これを「自分の性格には合っていないから、この仕事を辞めよう」と割り切ってしまうのも一つだと思うのですが、職業と自己の性格が完璧にマッチするということは、まぁ感覚的にあり得ないわけです。

上手く付き合う努力をしよう

最近TVでマインドフルネスの特集を見たんですが、その肝は「ストレスを感じている自己に気づくこと」でした。
自分の性格と上手く付き合うことも、これと同じではないでしょうか。

変えたいと思う自分の性格が垣間見えたときに、まずそれに気づくこと。気づいたら、少しでもそれを修正すること。
こういう努力が、仕事における自己実現には大切な気がします。

オムロン血圧計の歴史

先日、ある展示会でオムロンの講演を聞いたのですが、面白かったのでご紹介。
テーマとしては当社のMEMSデバイスを使ったウェアラブル機器のヘルスケア展開、みたいな話だったのですが、講演の中でオムロンの血圧計の歴史が出たんですね。

1973年に最初の家庭用血圧計を販売

当日はまだ「血圧は病院で計るもの」という認識が一般的だった中で、オムロンは40年以上前に家庭用の血圧計を販売したと。
いまや販売台数累計で1億台を達成しているそうです。

当時はまだ家庭用血圧計の基準値がありませんから、長年のコホート研究でその基準を設定したんですって。

ヘルスケアを知り尽くしている

40年以上前にヘルスケアに参入したオムロンが、いまウェアラブルという新しい携帯で新しいヘルスケアを提案しようとしているわけです。
しかもそれはC向けのアセンブリだけではなくて、ウェアラブルの中核をなすセンサーの技術も自社開発した上で、です。
これは会社の歴史も含めて、すごく理にかなった戦略ではないかな、と。

24時間365日・ノンストレスの健康モニタリング

この先間違いなく、24時間365日、ストレスなく自分の健康をモニタリングする時代が来るでしょう。
保険も変われば、食生活も変わる、働き方も変わるかもしれない。

弱視(ロービジョン)を調べる

ちょっと興味があって、弱視(ロービジョン)について調べてみました。

弱視者の定義

弱視者、ロービジョンとは一体何かという定義ですが、いろいろと定義が揺れているようですが、大まかものとしては以下の通りです。

  • 眼鏡やコンタクトレンズを使っても見ることが十分に回復せず、生活に不便を感じる状態
  • 矯正眼鏡を装用しても「視力が0.05以上、0.3未満」(世界保健機関WHO)

従来の法的な定義では0.05未満が盲、すなわち視覚的な情報を全く得られない方ですから、盲患者よりも視力としては高いけども、生活に不便を感じている患者を指します。

僕の裸眼での視力は0.1以下なので、コンタクトレンズを外したぼんやりとした状態でしか視覚情報を捉えられない、というイメージでしょうか。

弱視者の数

世界に2.5億人も存在するんですね。国内に関していうと、心臓病の患者は100万人、アルツハイマー病の患者は125万人、認知症の患者は170万人存在すると言われており、規模感として決して小さくない課題だなと。

ロービジョンの原因疾患

日本眼科医会の発表によれば、ロービジョンの原因疾患トップ3は以下の通り。

  1. 緑内障
  2. 糖尿病網膜症
  3. 加齢黄斑変性(※男女で変性規制、白内障など若干の差があり)

糖尿病の合併症として糖尿病網膜症は3~6割程度発症すると言われているそうです。糖尿病患者は国内に740万人いると言われており、かつ現代病として今後この網膜症も増えそうです。

僕の祖母も緑内障なんですが、こんなに視野が欠損してしまうのか、と今さらながら思いました。。

現在のソリューション

薬物療法やレーザー治療、手術などはあるとして、それでも矯正できない方は拡大読書器やルーペを使うというのが現状でしょうか。拡大読書器は自治体によって9割補助(定価20万円として18万円補助)が出ます。ただ、どれも弱視者のQOLを劇的に改善するかというと発展途上だなと。

それ以外に興味深いものとして、以下のように視覚以外を活用した技術があるようですが、使い勝手は悪そうです。

 

弱視やロービジョンという障害が社会に浸透していない(少なくとも、僕はこれまで知りませんでした)一方で、心臓病などと比べて同等以上の疾患者が存在する。世界で2.5億人という患者のQOLを劇的に改善する技術に注目してみたいです。

 

ベンチャーキャピタリストは育成できるか?

ベンチャーキャピタリストに必要なスキル・知識って非常に多岐に渡るなぁという実感があって、これって体系的に整理されているのかな?と調べていた中で、10年以上前のものですが経産省の調査・報告を見つけました。

ベンチャーキャピタリストの能力開発に資するプログラム開発・実証事業 最終報告

参考になる部分もあるので、ざっくりとまとめてみました。

ベンチャーキャピタリストになるための教育プロセス

アメリカ、欧州、韓国の傾向についてまとめると以下の通りです。

現在どういう状況かというのはありますが、おそらくMBA卒であることとかは今でも最低条件なのではないかと。

一方、日本ではMBA卒はまだ少数派なので、キャピタリストになるための教育プロセスって新卒で大手VC入社して経験を積むか、事業会社で実力と運を伴ってCVC的な動きを取るか、金融機関から転職するかが実態ではないかと思います。

アメリカ

  • MBAを卒業していること、または理系の大学院レベルの学位を有していること
  • MBA卒業生であってもVCに入社してから5年ほどはOJT
  • パートナー昇格のために経営経験(起業、大手企業の事業本部長クラスなど)

欧州

  • MBA卒ないしはそれに準ずる学歴
  • 優良(ブルーチップ)企業での3~7年程度の職務経験

韓国

  • ソウル大学など社会的評価の高い大学を卒業
  • 米国でMBAもしくは事業会社や金融機関等での勤務

ベンチャーキャピタリストに求められるスキル

スキルについてもいくつかまとめられていますが、個人的に大別すると「手法が決まっている領域」と「手法が決まっていない領域」の2つではないかと思います。

手法が決まっている領域

手法が決まっていない領域

  • Management Support
    企業経営の支援、企業戦略の立案・支援、マーケティング戦略の立案・実行など
  • Industry Experitise
    技術力・競争力評価のための専門的知見、市場環境・業界動向に関する見識など

なんで後者二つだけ英語なのかスッキリしませんが、「日本語で適切なカテゴライズが出来ない」というあたりが、手法が決まっていないというか、国内では体系的に整理できていないということなのかもしれません。

その他、シニアクラスへのステップアップには以下のようなスキルも必要とのこと。上の二つは「手法が決まっている領域」、三つめは「手法が決まっていない領域」でしょうか。

  • 投資案件や起業可能性を見極めるスキル
  • 多様なExit戦略の立案
  • 投資先を正しく導くためのソフトスキル(コミュニケーション能力、リーダーシップなど)

また個人的には、ベンチャーキャピタリストに求められるスキルというか素養に近いですが、以下の二点は議論の余地があるかなと。

  • 好奇心
  • 人を見る目

世界を変え得るような技術や製品を掘り出すためのアンテナ・好奇心や、人を見る目というか、優秀な起業家を見極めることはキャピタリストに必要な素養としてよく言われることです。ただ、この二つって果たして育成できるんでしょうか?これは経験(時間)が必要なのかな。

まとめ

  • 手法が決まっているなら覚える

法務や税務など、手法や答えが決まっている領域は自分で勉強してひたすら覚えるしかないでしょう。それら業務を専門家にアウトソースするにしても、平等に議論できるだけの知識は必要ですね。

  • 経験値を貯める

手法が決まっていない領域は、経験値を貯めるしかないでしょう。とにかく場数を踏むこと。市場環境・業界動向に関する見識などを他者から仕入れるための人脈も必要ですね。