中庸への回帰

ベンチャーキャピタリスト/山家 創(やんべ そう)のブログです。

まとめ:「研究開発型ベンチャー投資」で意識すべき直近の実績や技術ロードマップ

仕事がてら、直近のベンチャー投資や技術ロードマップを調査したので、せっかくなのでまとめておく。
研究開発型ベンチャーに投資をするVCやキャピタリストとして意識すべきことを重点的に。

ベンチャー白書2016(一般社団法人ベンチャーエンタープライズセンター

第1章 1.2015年度のベンチャー投資

・日本のVC等による年間投資は1162件に対し1302億円
・国内向け投資は874億円
・国内向け投資はIT関連:51.9%、バイオ/医療/ヘルスケア:18.7%
・国内向け投資の1件当たり平均投資金額は、IT関連:87.5百万円、バイオ/医療/ヘルスケア:123.4百万円、工業/エネルギー/その他産業:95.5百万円、製品/サービス計:60.8百万円
・直近5年間のトレンドとして、投資先ステージはシード、アーリーへシフト
・国内向け投資のステージごとの1件当たり平均投資金額は、シード:58.9百万円、アーリー:90.8百万円

第1章 3.投資回収の状況

・EXIT件数(比率)の推移は、IPO:92件(15.9%)、M&A:41件(7.1%)、セカンダリーファンド等への売却:140件(24.3%)、会社経営者等による買戻し:225件(39.0%)
・種類株の利用が増加している。15年度は金額比率で種類株:55.8%、普通株:44.2%
・2016年1~6月のIPOを俯瞰すると、ほとんどが対初値で騰落

第1章 5.覆面座談会

・2015年度の大口調達は、Spiber:96億円、メルカリ:84億円、アストロスケール:39億円

コメント

まだまだIT関連にお金が集まっている感じ。最近は研究開発型ベンチャー投資が流行なので、直近ではもう少し非IT関連にお金が集まっているような。1社あたりの平均投資金額は、大体肌感に合致。
EXITとしては、セカンダリー等への売却が多くてびっくり。あとは、会社経営者等による買戻しが多い。はっきり言って、これらはベンチャー・起業家にとっては何の得もしない(むしろマイナス)EXITなので、日本のVCってやっぱりエグイ

調査レポート: 186社の登記簿から分かったスタートアップの資金調達の「相場」

500startups.jp

・調査対象:2016年1月〜2017年3月に1億円以上の資金調達を行ったスタートアップ
・資金調達額の中央値は、シリーズAが2.6億円、シリーズBが3.8億円、シリーズCが4.0億円、シリーズDが13.5億円
・ポストバリュエーションの中央値は、シリーズAが11.7億円、シリーズBが18.9億円、シリーズCが35.5億円、シリーズDが66.2億円
・希薄化率の中央値は、シリーズAが22.1%と最も高く、シリーズBが17.1%、シリーズCが15.2%、シリーズDが10.8%
ストックオプション比率の中央値は、シリーズBが4.3%、シリーズCが4.6%、シリーズDが8.9%

技術ロードマップなど

NEDO:技術ロードマップ

www.nedo.go.jp

・新しいものから順に興味があるロードマップを閲覧すると勉強になる。個人的な関心領域は、以下の通り。

光電子集積技術に関する開発動向及び技術ロードマップ2015

・2030年を俯瞰すると、技術的には、クラウドコンピューティング、IoT(Internet of Things)やM2M(Machine to Machine)の普及、ビッグデータの活用、映像情報の高精細化(4K、8K)等、情報処理技術及び情報通信技術の高度化に伴う情報化のさらなる拡大によって、全世界の情報通信データ量が2010年の1000倍と爆発的に増加すると予想
地球温暖化等のエネルギー・環境問題の解決策として、低消費電力化、省資源化、低環境負荷化が求められている。このような中、電気回路と光回路を実装、集積化することで光配線によるデータ伝送を実現し、電子機器の省電力化、高速化、小型化を可能とする光電子集積技術は、これらの課題を解決する情報処理及び情報通信分野におけるキーテクノロジとして期待されている。
2030年には扱うべき情報量は2 YB(Yotta Byte、1024バイト)で、2010年の約1000倍に達すると見込まれている。
・2030年には、生活環境の身近から“雲の上(クラウドから先)”までのすべての階層において、莫大な情報の“取得”・“伝送”・“処理”・“利用”が我々の社会生活を支える技術基盤として、ますます重要になると考えられる。信号処理を担う電子技術と信号伝送を得意とする光技術、それぞれの特徴を活かした光電子集積技術はその最有力候補である。

・光電子集積技術関連市場動向
(ⅰ) スパコン、サーバ等の情報処理機器関連市場
(ⅱ) ルータ、スイッチ、光リンク、PON用ONU等の通信機器関連市場
(ⅲ) その他(自動車、ロボット、計測機器、ハイエンド撮像機器、ディスプレイ、ハイエンドウェアラブル端末、ゲーム機器、バイオ・医療機器、航空機等)のポテンシャル市場
(ⅳ) シリコンフォトニクス製造市場
(ⅴ) シリコンフォトニクスの競合市場(VCSELやDFBレーザ等をディスクリート実装するコンベンショナルな光リンク)

・各技術分野の開発動向の概要は、下記の通り。
(1) 高密度光配線
チップ間(ボード内)の光インターコネクトにおける高密度光配線へのシリコンフォトニクス技術適用は、世界的に見ても研究開発例はまだ少ない。PETRA、IBMIntel、HPなどが主な研究開発機関である。日本の国家プロジェクトおよび世界で代表的なコンピュータ企業が先駆的にこの分野に向けた研究開発を進めていることは注目すべきである。

(2) 光リンク
現在の研究開発状況において、シリコンフォトニクス技術の主な適用先は光リンクに用いられる光トランシーバ関連である。Luxtera、Intel、Mellanox、Acasia、IntelIBMなどが牽引している。PETRAは、開発した光I/Oコア技術のアクティブオプティカルケーブル(以下、AOC)への適用を狙っている。

(3) スイッチ
シリコンフォトニクス技術の光スイッチへの適用については、データセンタへの応用やメトロ・コアネットワークのROADM応用の研究開発がいくつか実施されているが、まだ多くはない。データセンタへの応用はアイディア提案レベルである。

(4) センサ
シリコンフォトニクス技術を用いたセンサへの適用は、現時点では、アプリケーションが模索されている段階であり、大学や研究機関からの発表で占められている。特に、Gent大はIMECと共同で、バイオセンサやガスセンサを実現している。

(5) 実装・ファブ
学会では、シリコンフォトニクス・プラットフォームやそれを用いたMPW(Multi-Project Wafer)サービスなどの発表がなされている。

・技術ロードマップによれば、情報通信インフラとして、2020年に400Gbps/ch x 波長多重、2025年に1Tbps/ch x 波長多重が求められる。情報通信処理インフラとしては、ボード間で2020年に50Gbps/ch、2025年に100Gbps/ch が求められる。これにミートする集積技術及びデバイス技術が必要。実装技術としては、2.5次元実装や3次元実装などが求められる。

メモ
  • VCSEL(ビクセル):垂直共振器面発光レーザの略称で、半導体レーザーの一種。低価格、大量生産に適する。

goo.gl

  • DFBレーザ:分布帰還型(Distributed Feedback : DFB)レーザー。波長安定性が高い、大容量・長距離通信の光通信に用いられている。
  • 光スイッチ:主に光通信網で使用されるデバイスで、電気信号に変換することなく光信号のまま特定の信号を分岐したり行き先を切り替える装置。

goo.gl

電子・情報技術分野 技術ロードマップ2015

(1)デバイス分野
・注目領域は、パワー半導体、システムLSI、メモリ・ストレージ、通信用デバイス
・配線・実装技術として、光インターコネクトは一つのテーマ
・先端デバイス技術としては、Nano CMOSやBeyond CMOS
・パワー半導体はSiC、GaN、Ga2O3ほか、いずれも変換効率向上、小型化、コスト低減が課題
・プリンテッド・エレクトロニクスの課題は、印刷TFTの高性能化、半導体層の高移動度化、プロセス温度の低温化など

(2)情報通信(伝達・蓄積)分野
・重点テーマは、広帯域化、省電力化、大規模化、高機能化・新機能の4つ。
・広帯域化については、光ノード技術が重点技術の一つ
・省電力化については、マネージメント技術や情報家電ネット―ワーク(IoT)。
・高機能化については、暗号技術や認証技術が興味深い。トラヒック計測・予測技術も大事。

(3)情報通信(情報処理・制御)分野
クラウドコンピューティング、ネットワーク制御技術、組み込みソフトウェア、ディペンダビリティ(自立的自己修復的な動作)

ナノテクノロジー・材料技術分野の技術ロードマップ2016

・まとめ中

ディスプレイ分野の技術ロードマップの策定に関する検討および市場・技術開発動向等に関する調査

・まとめ中

機能性化学材料の現状と中長期技術開発課題に関する調査

・まとめ中

経産省:技術戦略マップ2010

www.meti.go.jp

コメント

個人的には、情報通信がもたらす人間の進化と、物理的・機械的な技術がもたらす人間の進化、の両面に関心がある。時間・処理能力・フィジカルなど、人間がより人間らしくあるための進化だ。
光電子集積技術や付随するデバイス・実装技術は前者だし、まとめ中だがナノテクノロジーや材料技術の革新は、後者。異なる技術も、実は同じ未来に繋がっている。