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中庸への回帰

ベンチャーキャピタリスト/山家 創(やんべ そう)のブログです。

まずは、5年後に生き残る大学発ベンチャーを目指して

先日、文科省主催の『大学発ベンチャー創出シンポジウム』に参加してきた。
産業革新機構の志賀CEOをはじめ、大学発ベンチャー界隈では名だたる方々が登壇する、なかなか勉強になるシンポジウムであった。

シンポジウムの感想を含めて、簡単に「大学発ベンチャー」について少し調べたものをまとめたい。

大学発ベンチャーの事業環境

平成27年の経産省調査によれば、大学発ベンチャーは1,773社存在する。また、この内、黒字化しているベンチャーは55.6%に上る。
大学発ベンチャーの数、黒字化の比率いずれも前年を上回っている。ちなみに大学発ベンチャー数のピークは平成20年で1,807社だ。

現在はほぼピーク時の水準に達しており、既に900~1000社が黒字化していると言えよう。
47都道府県の各地に大学発ベンチャーが存在していると仮定(※)すれば、1都道府県あたり20社程度が既に黒字化しているということだ。
これは感覚的にかなり多いと思う。

※実際には東大発のベンチャーが圧倒的に多いので、あくまでも仮定の話だ

もう少し過去に遡れば、平成16年において黒字化した大学発ベンチャーの比率は26.6%であった。
およそ10年を掛けて研究開発、事業を行ってきた大学発ベンチャーが徐々に実を結んできたということであろう。

但し、本調査における「大学発ベンチャー」とは、

1. 研究成果ベンチャー:大学で達成された研究成果に基づく特許や新たな技術・ビジネス手法を事業化する目的で
新規に設立されたベンチャー

2. 協同研究ベンチャー:創業者の持つ技術やノウハウを事業化するために、設立5年以内に大学と協同研究等を
行ったベンチャー

3. 技術移転ベンチャー:既存事業を維持・発展させるため、設立5年以内に大学から技術移転等を受けたベンチャー

4. 学生ベンチャー:大学と深い関連のある学生ベンチャー

5. 関連ベンチャー:大学からの出資がある等その他、大学と深い関連のあるベンチャー

とあるから、全ての大学発ベンチャー = 研究開発型ベンチャーとは呼べないことに注意は必要だ。
例えば、東大の学生たちが起業したアプリ開発ベンチャー大学発ベンチャーと呼ばれ得る。
一般的な大学発ベンチャーの定義は、1. 研究成果ベンチャーだと思われるが、これがどの程度存在するのか気になるところだ。

大学発ベンチャーを支援する政策

大学発ベンチャーを支援する政策も充実してきた。
主立ったものをいくつか紹介する。

科学技術振興機構JST

大学発新事業創出プログラム(START)
  • プロジェクト支援型

1プロジェクトあたり基本額年間3千万円 x 3年以下

  • 事業プロモーター支援型

1事業プロモーターあたり原則上限年間2,500万円程度 x 5年度
※1事業プロモーターあたり4~5件程度

研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)

必ずしも大学発ベンチャーというものに限らないが、大学の研究成果を実用化するための技術移転支援制度だ。対象によっては最大で15億円をJSTが支援する。

新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO

こちらも大学発ベンチャーには限らないものの、研究開発型ベンチャーという広いくくりで支援する制度だ。

中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業

中小企業という枠組みでも大学等との共同開発が支援されている。

1億円以内(下限は1,500万円) ※事業期間中の総計

  • 実施項目2 追加実証・用途開拓研究支援事業-サンプルづくり支援事業-

1,000万円以内(下限は300万円)


これらに限らず、各地方自治体等でもベンチャーへの助成事業は活発化している。

大学発ベンチャーを支援するVC

上述したNEDOの「シード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援」で定められる認定VCとして、現在のところ18社のVCが認定されている。
加えて、昨今では東大を始めとする「大学発VC」が生まれており、大阪大、京大、東北大を含む計4大学に計1,000億円という膨大な資金が流れている。

business.nikkeibp.co.jp

事業会社によるファンド(CVC:コーポレートベンチャ–キャピタル)のニュースもよく目にするが、これも自社の新規事業の種として、研究開発型ベンチャーに注目が集まっている一因であろう。

大学発ベンチャーは、いまバブルである

シンポジウムの感想について誤解を恐れずに言えば、

大学発ベンチャーは、いまバブルである

ということに尽きる。シンポジウムに参加したいくつかのVCの中には、従来は大学発ベンチャーとは遠いところに位置していたVCも含まれている。
彼らは、いまどこに資金が流れているかを肌感覚として持ち合わせているのだ。

ただし、冒頭の経産省調査で忘れてならないのは、平成26年から27年にかけて24社増えた大学発ベンチャーの内訳とは、平成27年以前に設立されたベンチャーで新たに認識された144社に平成27年新規設立の52社を足して、調査時に閉鎖が確認された172社を除いているということだ。
つまり、新たに生まれる以上の大学発ベンチャーが死んでいるのだ。

たしかに大学発ベンチャーはバブルであり、今後数年で見れば大学発ベンチャーは一時的に増えるかもしれないが、長期的には淘汰が進んでいくと見る方が自然だと思う。

そして、5年後に本物だけが生き残る。

これは大学発ベンチャーだけでなく、大学発ベンチャーに投資する私たちVCも、そうだ。
時代に流されすぎず、確かな眼と支援で、まずは5年後に生き残る大学発ベンチャー創出を目指したい。