中庸への回帰

ベンチャーキャピタリスト/山家 創(やんべ そう)のブログです。

ベンチャーキャピタリストは育成できるか?

ベンチャーキャピタリストに必要なスキル・知識って非常に多岐に渡るなぁという実感があって、これって体系的に整理されているのかな?と調べていた中で、10年以上前のものですが経産省の調査・報告を見つけました。

ベンチャーキャピタリストの能力開発に資するプログラム開発・実証事業 最終報告

参考になる部分もあるので、ざっくりとまとめてみました。

ベンチャーキャピタリストになるための教育プロセス

アメリカ、欧州、韓国の傾向についてまとめると以下の通りです。

現在どういう状況かというのはありますが、おそらくMBA卒であることとかは今でも最低条件なのではないかと。

一方、日本ではMBA卒はまだ少数派なので、キャピタリストになるための教育プロセスって新卒で大手VC入社して経験を積むか、事業会社で実力と運を伴ってCVC的な動きを取るか、金融機関から転職するかが実態ではないかと思います。

アメリカ

  • MBAを卒業していること、または理系の大学院レベルの学位を有していること
  • MBA卒業生であってもVCに入社してから5年ほどはOJT
  • パートナー昇格のために経営経験(起業、大手企業の事業本部長クラスなど)

欧州

  • MBA卒ないしはそれに準ずる学歴
  • 優良(ブルーチップ)企業での3~7年程度の職務経験

韓国

  • ソウル大学など社会的評価の高い大学を卒業
  • 米国でMBAもしくは事業会社や金融機関等での勤務

ベンチャーキャピタリストに求められるスキル

スキルについてもいくつかまとめられていますが、個人的に大別すると「手法が決まっている領域」と「手法が決まっていない領域」の2つではないかと思います。

手法が決まっている領域

手法が決まっていない領域

  • Management Support
    企業経営の支援、企業戦略の立案・支援、マーケティング戦略の立案・実行など
  • Industry Experitise
    技術力・競争力評価のための専門的知見、市場環境・業界動向に関する見識など

なんで後者二つだけ英語なのかスッキリしませんが、「日本語で適切なカテゴライズが出来ない」というあたりが、手法が決まっていないというか、国内では体系的に整理できていないということなのかもしれません。

その他、シニアクラスへのステップアップには以下のようなスキルも必要とのこと。上の二つは「手法が決まっている領域」、三つめは「手法が決まっていない領域」でしょうか。

  • 投資案件や起業可能性を見極めるスキル
  • 多様なExit戦略の立案
  • 投資先を正しく導くためのソフトスキル(コミュニケーション能力、リーダーシップなど)

また個人的には、ベンチャーキャピタリストに求められるスキルというか素養に近いですが、以下の二点は議論の余地があるかなと。

  • 好奇心
  • 人を見る目

世界を変え得るような技術や製品を掘り出すためのアンテナ・好奇心や、人を見る目というか、優秀な起業家を見極めることはキャピタリストに必要な素養としてよく言われることです。ただ、この二つって果たして育成できるんでしょうか?これは経験(時間)が必要なのかな。

まとめ

  • 手法が決まっているなら覚える

法務や税務など、手法や答えが決まっている領域は自分で勉強してひたすら覚えるしかないでしょう。それら業務を専門家にアウトソースするにしても、平等に議論できるだけの知識は必要ですね。

  • 経験値を貯める

手法が決まっていない領域は、経験値を貯めるしかないでしょう。とにかく場数を踏むこと。市場環境・業界動向に関する見識などを他者から仕入れるための人脈も必要ですね。